ショートコラム

税金ミニ知識 <5>

 サラリーマンが「知らない間に税金を取られている」と思っているのは、「源泉徴収」といわれる給与天引きの納税方法のせいです。同じ天引き方法なのに、所得税については「源泉徴収」、住民税については「特別徴収」と呼び名が異なるのは、国税と地方税の違いです。給与支払者などに徴収事務を行わせて納税させる方式ということではどちらも一緒です。

 しかし、同じ天引きであってもこの2つは大きな違いがあります。その違いのキーワードは、「前払い」と「後払い」です。このキーワードを念頭に、自分自身の納税方法をしっかり把握しておきましょう。

① 源泉徴収
 給与などの支払者が源泉徴収義務者となって、その給与を支払う際に所得税を天引きして納付する方法です。この天引きされる所得税は、1年間の給与の総額に対する所得税を月割りにした「前払い」の税金です。このように月々の給料やボーナスから、概算で所得税の前払いとして天引きしておき、最終的には年末調整で精算されることになります。
 給与のほか、預貯金の利子などの支払いの際にも源泉徴収がされますが、これらはこの源泉徴収により納税が完了することになっています。

② 特別徴収
 地方公共団体に代わって特別徴収義務者が、納税する者から税金を預かって納付する方法です。天引きされるサラリーマンの住民税は、前年の所得に対して納める住民税の税額を単純に12分割して、今年の給料から「後払い」しているにすぎません。
 具体的には、前年1月から12月までの1年間の所得に係る住民税を、単純に12分割して今年の6月から来年の5月までの間に天引きしているだけなので、今年の給与の増減は何も影響しません。残業手当が多い月に住民税が増えることなどはありえないことになります。

源泉徴収・特別徴収

税金ミニ知識 <4>

 非課税と免税と基礎控除は、その所得や財産の性質や政策上の見地などから税金を課さないということでは、いずれも共通しています。しかし、それぞれの違いがあります。

 非課税財産や非課税所得は、その申告の手続きやその課税の以前においてなんら手続きをすることなく税金がかかりません。一番、お得なお買い物です。
 免税は、税金を免除してもらうための申告や手続きを行うことによって税金がかからないことになります。減免と言われるものも、納税者や課税物件などの事情によって認められているものなので、やはり申請の必要があります。

 また免税点として定められた一定額以下又は未満の場合には、課税されませんが、たとえば免税点を超えた場合には、その超えた部分だけでなく免税点である一定額部分も含めて全部に税金がかかってきます。
 基礎控除として、税額計算に際して課税標準から控除する金額には税金がかかりません。もしも基礎控除額を超えた場合にも、その超えた部分のみに税金がかかり、基礎控除額そのものについて税金はかかりません。

非課税・免税・基礎控除

税金ミニ知識 <3>

 早めに申告する人もいれば、中には『まだ3月まで時間がある』とのんびり構えている人もいます。気がついたら、確定申告期限の3月15日が過ぎてしまったのでがっかり…。

 …ということになっても、サラリーマンの還付申告に関しては実は大丈夫です。原則として確定申告する必要のないサラリーマンは、還付を請求する権利を5年間使うことができるのです。ですから、春に提出しそびれたり昨年提出し忘れたりしていても、今からでも還付してもらえます。

 でもやっぱり、後になってから添付する書類を揃えることは大変ですから、記録も記憶も新しいうちに還付申告することをお勧めします。

確定申告期限3月15日

税金、ちょっと勘違い <3>

 確定申告時期には私も申告無料相談会場でお手伝いをしています。仕事を早退してきたという若いご主人と赤ちゃんを連れたかわいい奥さんの相談は、案の定、医療費控除の還付申告です。出産にかかる医療費をはじめ、細々した領収書も整理し、通院のための電車代も書き出してあります。準備万端です。「では源泉徴収票を出してくださいね」と言った私は思わず「あっ、れぇ!?」と。

 毎年相談者の中に、必ず1人か2人いるのです。源泉徴収票の「源泉徴収税額」が0円なのに還付申告にやってくる人…。
 戻ってくる税金がないのですから還付申告も成立しないわけですが、まさか支払った医療費が戻ってくると、そこまで勘違いしていたりして…?

源泉徴収票・医療控除

税金ミニ知識 <2>

 所得税法のいろいろな規定の条件に「生計を一にする」ということがでてきますが、これは必ずしも同じ家に住んでいなければいけないというものではありません。「生計を一にする」かどうかの判定は次のように定められています。

① 勤務・修学・療養等の都合で、他の親族と日常は一緒に住んでいない親族であっても、勤務や修学等の余暇には他の親族のもとに帰省してくることを常例としている場合や、これらの親族間において、常に生活費・学資金・療養費等の送金が行われている場合には、生計を一にするものとされています。

② 親族が同じ家に住んでいる場合には、明らかに互いに独立した生計を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとされます。

 したがって、単身赴任の父親と自宅に残っている家族というケースも、実家を離れて下宿している大学生の長男に仕送りをしているというケースも、病気療養のため長期入院している老親というケースも「生計を一にする」と考えられます。

「生計を一にする」所得税法

税金ミニ知識 <1>

 もうじき年末調整の季節がやってまいります。それに関連してですが、控除対象配偶者や扶養親族に該当するかどうかといった、各種の所得控除の適用の可否について、また、その判定の要素となる配偶者や親族の所得金額や年齢などについては、原則としてその年の12月31日の現況によるものとされています。

 また、その扶養親族等がもしも年の中途において死亡し又は出国した場合には、その死亡又は出国の時の現況により判定されることになります。この原則は納税者本人についても適用されます。つまり、納税者本人が障害者や寡婦(寡夫)に該当するかどうかについても、判定時期はこの原則に従うことになります。

 ちなみに「年末に生まれた子供は親孝行だ」などと言われるのは12月31日の現況(年末調整時の現況)により扶養親族が1人増えることになり、年末調整による還付金が増えることが多いからです。また、年の途中で死亡した親族については、死亡した時点で扶養親族かどうか判定されますので、生計を一にしていた父親が年末調整のときに既に死亡していても、その死亡の時点で扶養親族に該当していればその年についての扶養控除を受けることが出来ます。

 この「その年の12月31日の現況」もしくは「死亡又は出国の時の現況」という原則は、生計を一にしていたかどうか、親族関係にあったかどうか、という判定にも共通です。

 

年末調整12月31日

税金、ちょっと勘違い <2>

 贈与税の相談に来所なさったSさんは、贈与税は財産をもらった人が払う税金なのに財産を贈与した側が払うものだと勘違いしている人の一人でした。贈与税について一連の説明をし、贈与税額を算出したところ「えっ!僕が払うの?」とSさんに言われ、私は絶句してしまいました。
 親に独立開業資金を出してもらおうという彼は、贈与税の支払いも贈与する親の側だと都合よく勘違いしていたのです。どうやら独立開業よりも親から独立することのほうが先決問題に思われました。どこまで親のスネをかじるのやら…。

 そのほか、贈与税の「ちょっと勘違い」には、1回の贈与ごとに基礎控除額を使うことができると勘違いしているケースや、贈与する側の人一人につき110万円の基礎控除額が使えると勘違いしているケースがあります。

 場合によっては、勘違いを2つ3つ合わせて贈与税をややこしくしている方もいます。祖父と祖母の二人から、それぞれ100万円ずつ贈与されたけど、祖父からも祖母からも110万円以下だから贈与税はかからないと勘違いしていた孫娘さんもいました。贈与税の勘違いは、どうやら自分の都合に合わせて勘違いしていることが多いようです。

贈与税の勘違い

 

税金、ちょっと勘違い <1>

 脱サラをしてデザイン事務所をはじめたNさんは、事業が順調に進んで、今度は税金のことで頭を悩ませています。確定申告も終わり所得税は一段落しましたが、まもなく届く自宅の固定資産税通知書のことが心配です。

 「確定申告で増えた収入分、固定資産税は一体どのくらい増えることになりますか?」そんな質問をされた私も目を白黒させてしまいました。所得税が増えても固定資産税には何の影響もありません。

 収入を得たことに基づいて課税される税金を収得税、財産を持っていることに基づいて課税される税金を財産税といいます。消費税は特定の消費をしたことに対して、また流通税は財産の移転に基づいて課税されます。登記をする際の登録免許税は、この流通税です。

 生活をするために収入は欠かせませんから、収得税の所得税や住民税は、収入に応じてほとんどの人が払うことになりますが、財産がなければ、財産税である相続税や固定資産税とは縁がないことになり、逆に財産を持っていれば税金ももれなくついてくるというわけです。

自宅の固定資産税
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